泣けたこと

人の前で泣くことなど、まして声が出ないほど泣いたことは記憶に無い。

子供の頃から泣くときは一人のときと決めていたから。

冷たい人だと恋人にも言われた。

そんなわたしが人前で大泣きをした。

まるで一人でいるときのように、人目もはばからず泣いた。

止めれなかったし、止まらなかった。

頬を伝う涙の温度を感じながら、

窓越しに見える車のヘッドライトを見つめていた。

右に曲がったり、左に折れたり。

目で追いながら、わたしの気持ちは右、左とぶれていないか、

まっすぐなのか、と心に耳を澄ましていた。

ちゃんと本音を伝えているの?

はい大丈夫、伝えていますよとばかり涙が溢れてくる。

翌朝、人前で泣いたことで気が付いた。

真剣に本気でいた自分に。

泣かせてくれた相手へ

心からありがとうと伝えたい。