
あるホテルに魅せられて
出張の足を伸ばし、念願の恋人に会う心持ちで訪れた。
クリスマスも近いとあり、もみの木が綺麗に飾られ
外国のような佇まいだった
一人バーに出向きカウンターに座ると
黒人男性のジャズシンガーがピアノを弾いていた
バーテンダーが何かリクエストはないか?と訊くので
いくつか好きな曲を告げると
彼はすべての曲を歌ってくれた
バーに一人で来ているのは私くらい
あたりは恋人同士か、2人連れ
向こうにシガールームが見える
スーツ姿の男性が歓談している
「今度来る時は恋人ときたいな」
帰ろうとつま先を床に着いた時
大好きな曲が流れて来た
As Time Gose By(時は流れても)
訳も無く胸が一杯になりつま先を床からあげ座り直した
バーテンダーが何かもう一杯でもと訊く
「ぐっすり眠れるものを一杯」とリクエストし
ピアノの方に目をやるとシンガーの彼がウィンクした
あれから数年
これからそのホテルへ仕事で向かう
でもバーには寄らない
恋人と行く日まで