顕微鏡なわけ

忘れもしない10歳のクリスマスプレゼント。

毎晩星を眺めるのが好きだった。

勾配のあるトタン屋根に裸足で登るのもそろそろ怖い。

望遠鏡が欲しいと父に頼んだ。

クリスマスの夜

姉は希望通りの白いギター

私には望遠鏡にしては小さな包み。

開けると顕微鏡!

言葉が浮かばない。

喜ぶべきか不満をぶつけるべきか。

「星が観たいのに何でこれ?」

精一杯の言葉。泣きそうだ。

父が言った

「まだお前には望遠鏡は早い。まず小さなものを観てごらん。星はそれからでいい」

ふん。

納得いかずも、小さなものをガラス板にのせては覗いてみた。

ひえっ、気持ち悪い。こんなに小さいのに目がある、動いてる。

虫が苦手になった。

大人になり大枚叩いて望遠鏡を買った。

初めて自分で調整してみる月や星に感動した。

姉に貸したら壊れたとかで返ってこなかった。

今も顕微鏡は健全。

はいはい、私は小さなものに目をやりなさいってことね。