赤い倍音

20歳半ばで赤ワインに魅せられ毎日飲んだいた。

当時の市場には1980年代のワインがメインで

ボトルのエチケットは繊細なデザインの物が多く、

コルクも長く質の良い物だった。

私はエチケットもコルクもワインボトルもワインの木箱も愛おしくてとっていたので

部屋はワインの香りで充満していた。

「こんなに飲んでも涙は透明なんだ」

身体から溢れるほどの赤ワインを飲んでいた。

一人で赤ワインを飲むときは注意しないとならない。

涙が出る時は私は白を選ばないらしいから。

「今夜は赤ワインでも大丈夫?」と自分に訊く。

「大丈夫よ、何か問題あります?」と応えてくる。

そうそれならば、と赤ワインを飲みはじめる。

今はグラス2杯で十分の量。

なのに私は気づく、寂しがり屋が現れたことに。

「大丈夫って言ったじゃない」と涙こぼして自分に言う。

「・・・・・・・」応えてくれない。

ほらね、一人で飲む時の赤ワインは危ないのです。