
小学校に入学した春のこと。
今でも忘れられない授業があります。
すけがわあやこ先生という黒いフレーム眼鏡をして長い黒髪の新人の先生が担任になりました。
私は東京杉並区の父の勤め先が借り上げているアパートに引っ越ししたばかりでした。
高度経済成長真っ盛りと言える時代、あちこちの空き地はいつも工事の機材が置かれており、道も舗装されているところは多くありませんでした。
入学して1週間したころすけがわ先生が課題をだしました。
「自分の家から学校までを地図にしなさい」
配られたA3サイズのわら半紙。
家から学校までの道のりを描くのですが用紙に収まりません。
すけがわ先生が、
家を角に描なさい。それでも入りません。
道をクネクネ描かずこのように四角く描けないの!とお隣の友達の地図を見せられます。でも四角く描けません。
教室から1人、2人とお友達は描き終えグランドに遊びに行きます。
何度も何度も消しゴムで消しているうちにわら半紙は穴があき、すけがわ先生がまた叱りに来ます。
「何んで描けないの!他の生徒はみんな描いているでしょ!」
ポタポタと涙がこぼれ、わら半紙はふやけ、ゆがめてしまいます。
休み時間に突入しもう時間がないと言われ、私はお友達の地図を真似して描きました。
多分、その地図はでたらめだったと思います。
私の何度も描き直された地図は工事機材のある空き地を通り、どぶ?川に掛かった長い土管を渡り、原っぱを横切るという子供の通り道でした。
それから数日して、すけがわ先生が家庭訪問に来ました。
そのとき、あの地図を描かせた目的がこれだったんだと子供ながら気づきました。
先生は母に「お友達と違うので困ります。ちゃんと普通に育てないとこの先大変です」と散々注意して帰って行きました。
今では懐かしい思い出ですが三つ子の魂でしょうか?
今も地図を描くのが好きではありません(笑)。