辞書の喧嘩

今も鮮明に覚えている9歳のころにした姉との喧嘩。

原因は「辞書は間違うこともある」。

何かのことで姉が「じゃ辞書に書かれていれば間違いないでしょう!」というので

「辞書が間違うこともあるでしょう?」と私が答えたのが始まり。

「よぅし、では確かめようじゃない!」となり

私はA辞書、姉はB辞書を持ち、最初のページから言葉を読み合い、ぱらぱら開いては言葉を照らし合わせてみるという作業をした。

その作業に姉も疲れ始め、私はまだペラペラめくっていたのだが、パタンと辞書が閉じた瞬間、後ろの改訂版という文字をみて、「これは何?」とパパさんに訊きに行った。

「時代とともに辞書に書かれた内容を見直し改めたり、新しくどんどんしているということだよ」とのこと。

「ほら、やっぱり!今辞書に書かれていても違ってることがあるじゃない」と姉に反論したのである。

何もそんな向きにならなくてもと自分で自覚しつつ、「辞書がすべて正しいなんて嫌だ!」と思っていたのだ。

書かれているものがすべて正しいということが、まるでこの先の自分の人生も「実は決ってます!」と言われている様な気がして嫌だった。

この時の喧嘩は忘れられない。