買い物かご

私が子供の頃、祖母は買い物かごをもって市場に出かけていました。

冬は黒いミンクのロングコートにベージュの長靴、手には大きめの編んだ買い物かご、

夏はエプロン姿につっかけサンダル、そして買い物かごです。

買ったお魚や野菜は新聞紙や竹でできた包装紙で包まれていて、発砲スチロールやラップなどはありません。

ときどきついて行くその市場はいつも賑やかで、おまけしてくれる楽しい雰囲気のところで

子供の私は気恥ずかしくてコソコソ背の後ろに隠れていました。

でも、いつか大人になってそんな気恥ずかしさもなく、お気に入りのかごをもって買い物に行く日がくることをこころ待ちしていたのです。

買い物に行く年頃になると、市場は消え、買い物のビニール袋が用意され、おまけしてくれる楽しい雰囲気はありませんでした。

買い物かごはむしろ持って行くのが恥ずかしいような時代でした。

 

今日、百貨店で老夫婦とすれ違った時に、おばあさんが懐かしい買い物かごをもっているのを見て

祖母を思いだしました。

買い物袋持参がスーパーではあたりまえになっている今、そろそろ買い物かごを持って行ける時がきたかなと、自分の年齢もいいころかと思います。