長らく留守をすることになり食べきれない無花果(イチジク)を冷蔵庫に一先ず入れて旅立った。
帰宅し冷蔵庫のドアを開くとピチピチした若い無花果の姿はすっかり皺のある老女に変わっていた。
無花果をジャムにする位だから皺など味に関係ないだろうと台所に乗せるが
さすがに自分では食べる気もないことはわかっているので勝手口を開けてバルコニーの壁に乗せてみた。
カラスが近くで時折に休むので無花果に気がつき、あっと言う間に食べてしまうだろうと思ったからである
さて、もうなくなったかなと1時間ほど経ち覗いてみるとまだ無花果は座っていた。
そういえばカラスの鳴き声が聞こえないから今日はまだ来ていないのだろう
そうこうして翌日になり猛強風の台風がすごい音でやってきた
木々や葉を大きく揺さぶり電車も不通になっている。
狂ったような強風は1日以上続いた
あ、無花果。
猛強風で吹き飛ばされた無残な姿を見たくはないと思いつつ勝手口から首だけ出して覗いてみると
老婆はありえないほど変わらず元の場所に腰掛けていた
まるで文鎮のような赤胴に染まりずっしりと。
台風が去り陽射しが戻ってきたのでカラスもさすがに遊びにくるだろうとそのまま置くことにした。
今日で置いてから3日経ったが先ほども覗くと大老婆が以前よりもずっしりと座っているではないか。
カラスもピチピチが好きなのだな。